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【美容薬剤師が解説】シミ・肝斑とトラネキサム酸。「内服(医薬品)」と「外用(化粧品)」は、何が違うのか。

#インナーケア#美容習慣#肝斑

こんにちは、美容薬剤師 佑(タスク)です。

トラネキサム酸」という成分の名前を、聞いたことはありますか?

美白系の化粧品によく配合されていますし、シミや肝斑(かんぱん)のケアで、病院でも使われる成分です。

ただ、同じ「トラネキサム酸」でも、「飲むもの(内服)」と「塗るもの(外用)」では、まったく別の話になります。

今日は、薬剤師として、その違いを、整理してお伝えします。

そもそも、トラネキサム酸とは?

トラネキサム酸は、もともと、止血や抗炎症の目的で使われてきた成分です。

プラスミンという物質の働きを抑えることで、抗出血・抗アレルギー・抗炎症の作用を示します【1】。

そのトラネキサム酸が、シミの一種である「肝斑」に効くらしい、と日本で見いだされたのは、1979年のこと。

実は、偶然の発見だったと言われています。

長い間、研究は多くありませんでしたが、近年、研究が進みました。

成人の肝斑に対するトラネキサム酸の有効性は、複数の研究をまとめて解析したメタ解析でも報告されています【2】。

現在では、内服のトラネキサム酸は、肝斑の治療の選択肢の一つとして位置づけられています【3】。

そもそも「肝斑」とは?

ここで、「肝斑」について、少しだけ。

肝斑は、シミの一種ですが、いわゆる「シミ(老人性色素斑など)」とは、区別して考えられています。

主に30代後半〜40代以降の女性に多くみられ、額・頬・頬骨のあたり・口の周りなどに、左右対称に、もやっと広がって現れるのが特徴です。

目の周りだけは色がつかずに抜ける、という特徴もよく知られています。

紫外線を浴びると濃くなり、範囲も広がります。

また、女性ホルモンとの関連が指摘されていて、妊娠中や、月経、経口避妊薬の使用などで、悪化することがあります。

発症には、紫外線、ホルモン、遺伝的な素因、加齢に伴う肌の変化など、複数の要因が関わると考えられていますが、その原因は、まだ完全には解明されていません。

ひとつ、日々のケアに関わる大切なことがあります。洗顔やクレンジングでの強いこすりすぎ、過度なマッサージといった「物理的な摩擦」は、肝斑を悪化させる要因になりうる、と指摘されています。

シミが気になると、つい一生懸命こすりたくなりますが、肝斑に関しては、それが逆効果になることもあるのです。

ただ、ここが大切なのですが ──

自分のシミが「肝斑」なのか、別の種類のシミなのかを、自己判断するのは、とても難しいです。

見た目が似ていても、種類が違えば、適したケアも変わります。

シミが気になるから、とりあえずトラネキサム酸を」と自己判断するのではなく、それが何なのかを皮膚科の専門医に診てもらう。それが、遠回りのようで、一番の近道です。

なぜ、肝斑に働くと考えられているのか?

少し専門的になりますが、仕組みを簡単に。

肝斑は、もともと一つの原因で起こるものではなく、肌の構造的な変化や、メラノサイト(色素を作る細胞)の働きの高まりなど、複数の要素が重なって生じる状態だと考えられています。

そのうえで近年、肝斑には「微小な炎症」や「血管の変化」も関わっていて、そこに「プラスミン」という物質の活性化が関係している、という指摘がされるようになりました。

「トラネキサム酸」は、もともとこのプラスミンの働きを抑える成分です。

肝斑に関わるとされるプラスミンの活性化を抑えることで、メラニンが過剰に作られるのを抑えたり、赤みや血管の要素にも働きかけたりする可能性がある ── これが、トラネキサム酸が肝斑に用いられる理由の一つと考えられています。

ここが大事:「内服(医薬品)」と「外用(化粧品)」は違う

ここからが、今日、一番お伝えしたいことです。

トラネキサム酸には、「内服(飲む)」と「外用(化粧品)」の、2つの使われ方があります。

そして、この2つは、効果も位置づけも、大きく異なります。

【内服(飲むトラネキサム酸)】=「医薬品」
 肝斑に対して、研究でも効果が報告されています【2】。ただし、注意すべき点があります。トラネキサム酸という医薬品の、正式に承認された効能(添付文書に記載のあるもの)は、出血傾向や、湿疹・蕁麻疹、扁桃炎・口内炎などの症状であり、「肝斑」は、承認された効能には含まれていません【1】。つまり、肝斑に対して内服する場合は、いわゆる「適応外(保険適用外)」の使い方となり、自由診療(自費)になるのが一般的です。 また、血液が固まりにくくなる作用に関わるため、血栓のリスクがある方など、使えない場合もあります【3】。医薬品である以上、必ず医師の管理のもとで使うべきもので、自己判断で使うものではありません。

【外用(化粧品のトラネキサム酸)】=「美白有効成分
こちらは、医薬部外品として、多くの化粧品に配合されています。 ただし、効果は、内服とは比べものになりません。化粧品の外用は、あくまで「予防」や「維持」が中心の、おだやかな位置づけです。「化粧品に入っているから、飲み薬と同じように効く」わけではない、ということは、知っておいてほしいと思います。

「知っておく」ことが、自分を守る

同じ「トラネキサム酸」という名前でも、飲むのと塗るのとでは、こんなに話が違います。

化粧品の広告で「トラネキサム酸 配合」と見ると、なんだか、すごく効きそうに感じるかもしれません。

でも、化粧品に配合されている外用のトラネキサム酸は、あくまで、おだやかなケア。

過度な期待をするものでも、不安になるものでもありません。

そして、もし本格的に肝斑が気になるなら、自己判断ではなく、皮膚科で相談するのが、一番の近道です。

私が大切にしたいのは、「これを使えば消える」と煽ることでも、「化粧品なんて意味がない」と切り捨てることでもありません。

正しい知識を持って、自分にとって必要なものを、自分で見極められること。

その知識が、あなた自身を、誇大な広告からも、過度な不安からも、守ってくれると思っています。

今日も、あなたが、あなたのペースで。

ー 美容薬剤師 佑(タスク)


※この記事は、トラネキサム酸に関する一般的な情報をお伝えするものです。
※肝斑・シミの治療や、トラネキサム酸の内服については、自己判断せず、 必ず皮膚科医にご相談ください。
※本記事は、特定の医薬品の使用を推奨するものではありません。


【参考文献・出典】
1.トランサミン錠250mg/錠500mg/カプセル250mg/散50% 添付文書   (第一三共株式会社)2023年1月改訂(第1版)
2.Zhang L, Tan WQ, Kuang MJ, et al. Tranexamic acid for adults with melasma: a systematic review and meta-analysis. Biomed Res Int. 2018; 1683414.
3.美容医療診療指針(令和元年度厚生労働科学特別研究事業)ー 日本美容外科学会会報 2020; Vol.42 特別号.

この記事の著者

美容薬剤師 佑(タスク)

ずっと劣等感の中にいた自分が、誰かをインスパイアできる存在になれたら ── それが、私の生きがいです。
「完璧」より、「ちょっとマシ」を。
毎日積み重ねるために、おうち美容アイテム(化粧品)を誠実に並べています。
 
【主な履歴】
・元・調剤薬局の経営者(バイアウト済)
・美容薬剤師協会の設立メンバー
・コスメトロジー(化粧品学)の監修
・大手企業で新規事業の開発

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